とまとの推しが尊い

ジャンルごった煮、推しにまつわることを書き連ねるブログ

22 とまと、推しの舞台を見に行く(その1)

田中さんがボイメン脱退してから、推し活どうやってこうかなーなんてぼんやり考えていたわけですが、線引きとかせず、何も考えずにゆるっと全てを応援していこうという気持ちになりました。

というわけで、久々に推しの活躍を見たい!推しを同じ空気を吸いたい!ということで突発的に取っちゃいました舞台「ピサロ」のチケット。

成り上がりのスペイン将軍ピサロは、兵を率いてインカ帝国征服へと向かう。
2400万人を従えるインカの王アタワルパを生け捕りにしたピサロは、次第にアタワルパに心を開く。そしてアタワルパもピサロを信頼しはじめるのだが…。
(公式HP 「あらすじ」より)

人類史上繰り返される異なる概念、宗教、文化間の衝突を二人の男を通して、今を生きる我々に問う「ピサロ」。
(公式HPより)

世界史っぽい作品、全く観たことがなかったのでとても新しい体験!推しがいると、こうやって新しい一歩が踏み出せるから嬉しいですね。


1:ネタバレ一切なしの感想

演出が凄すぎる……渋谷に、インカ帝国が、あった……。今まで映画かミュージカルか、舞台もDVDでしか観てこなかった自分にとって、全てが新鮮で、圧倒的「生」の物語で、世界、だった……。

 

事前に予習していたつもりでも、私が学んだのはあくまでも文字の知識に過ぎなくて、目の前で繰り広げられる生々しくて荒々しい、土と血の匂いには到底及ばなかったなぁ……。

 

人間の不完全さとか、死への恐怖とか、救済としての信仰とか、現代の日本だとあんまり考え抜けないテーマが多くて楽しかった!です!

それぞれの宗教観についてもしっかり説明台詞があって、各勢力の思惑とか思想の穴が丁寧に語られていて分かりやすかったのも有り難かった。

結局人間はいつの時代も不完全で、だからこそ人間を超えたところにすがりついていて、いつかは死ぬ。ラストシーン、視界が滲みました。

 

そして氷魚さんの肉体美……すらっとした身体に丁寧に筋肉がついていて、洗練されてました……。氷魚さんも渡辺さんもいわゆる筋骨隆々な感じの雄々しい肉体美とは違ったのですが、違うからこそストーリーが引き立っていて、本当にこの舞台のための身体作りだなぁ……と感動しました。


2:ピサロの生涯(観劇前に自分で予習したもの)

歴史のことをちょっと勉強した方が楽しめるかな?と思って、観劇前に自分で調べたものを置いておきます。歴史って暗記ばっかりで嫌だなってイメージでしたが、こんなドラマチックな争いがあったなんて……!と、予習しながら感動しました。あまりに興味深い争いの歴史なので、ピサロ観に行かない方にこそ読んでいただきたい……。史実なのでネタバレではないと思うのですが、これから観劇される方で絶対に話の筋を知りたくない方はご注意ください。

ピサロ (1470年頃~1541年) はスペイン人のコンキスタドール(=征服者)。教育されず、文字も知らないままで育ったピサロは、イタリア戦争に参加したのち、南アメリカを探検してペルーに広大な土地があることを知り、スペインでペルー支配の許可を受けるとペルー侵攻を開始。その勢いのままインカ帝国も征服するのですが、インカ帝国の首都の領有権を巡って他のコンキスタドールと対立し、内戦を経てスペイン人の支持を失ったピサロは死刑宣告をされた……という、なんとも波乱万丈な人生を送っているんですね。
しかも、その死刑の理由はアタワルパを無実の罪で処刑したこと。

ピサロがアタワルパを処刑……?一体何があったのでしょうか。

1531年には約180人の手勢と37頭の馬を率いてパナマを出港し、ペルーへの侵入を開始した。サン・マテオ島で騎馬隊を下船させ、トゥンベスまで南下し、サン・ミゲル・デ・ピウラを建設した。その後、インカ皇帝アタワルパを追って南進した。1532年にカハマルカでアタワルパと会見し、その場で生け捕りにした。アタワルパの身代金として莫大な貴金属を受け取ったが、アタワルパが存在する限り先住民が彼をリーダーに担いで反乱を起こす可能性があると判断し、約束を反故にして、1533年7月26日処刑を敢行した。アタワルパは自身を「太陽の子」と信じ、いつか復活して報復すると誓いつつ死んで行ったと言う。その後もピサロインカ帝国の分裂を巧みに利用しながら進撃し、11月にはインカ帝国の首都であるクスコに無血入城した。(Wikipediaより)

いつか太陽の子として報復すると誓って死んでいったアタワルパが原因で、ピサロが処刑されることになる……こんな完璧なドラマがあってよいのでしょうか……

次にアタワルパの記事を読むと、ピサロによる侵略やピサロとアタワルパの関係性には宗教の対立や文化の違いが大きなファクターになっていることが読み取れます。

 

バルベルデ神父(ピサロの部下)は通訳を通し、(アタワルパ)皇帝と臣民のキリスト教改宗を要求し、拒否するならば教会とスペインの敵と考えられると伝えた。アタワルパは「誰の属国にもならない」と言うことによって、彼の領土におけるスペインの駐留を拒否した。

 アタワルパが神父に対し、彼らがどんな権威でそのようなことを言うことができるかと冷たく尋ねたとき、神父は聖書を皇帝に勧め、この中の言葉に由来した権威だと答えた。皇帝は聖書を調べ、「なぜこれは喋らない」と尋ね、地面に放り投げた。この行動はインカには書き文字が無かった事によるものだが、結果的にスペイン人に対しインカと戦うための絶好の口実を与えてしまった。神父が神に対する冒涜だと叫ぶ声を合図に、射撃は開始され、2時間にわたり7,000人以上の非武装のインカ兵が鉄剣と騎兵により殺された。

アタワルパは未だスペイン人が彼の帝国の支配を目論んでいることを信じられなかったので、彼らが探している金銀を与えれば自分を釈放し立ち去ると考え、ピサロに部屋1杯の金と、銀を2杯提供することに同意した。ピサロは申し出に唖然とさせられたが、皇帝を釈放する意向は全くなかった。それは、ピサロ周辺諸国において秩序を維持するためには現地住民に対する皇帝の支配力を必要としたためでもあり、更にアタワルパの宣言によってピサロ自らが帝国全土の総督として君臨することに関してインディオからの正統性の承認を得ることを意図したためであった。

インカ帝国守備隊の保有する兵はスペイン兵をはるかに上回る数であったため、その差し迫っている攻撃を恐れ、数カ月後にスペイン人は、アタワルパを処刑することを選択した。ピサロは、皇帝が偶像崇拝を常習としたこと及び実の兄を殺害したことでスペイン人を不快にさせたとして火あぶりによる死刑判決を下した(実の兄の死についてはアタワルパが関与した証拠はない)。
インカの宗教では、焼死した魂は転生できないとされているため、アタワルパはこの判決に恐怖した。ここでバルベルデ神父が、キリスト教への改宗に同意するなら判決文を変更するように働きかけるとアタワルパに言った。皇帝は洗礼を受けることに同意し、洗礼名フランシスコ・アタワルパを与えられ、キリスト教徒たる彼の要求に従い、焚刑に代えて鉄環絞首刑となった。遺体は一部焼かれた上でキリスト教の方式により埋葬された。
(いずれもWikipediaより)(()内は筆者によるもの)

話し言葉しかない文化圏、侵略のために使われる権威としての聖書、自分の宗教観のために最期に改宗を迫られる皇帝……。宗教ってあんなに愛を説いているのに、いつの時代も戦争と切り離せないんですよね。悲しい。

とりあえずこれくらいの知識をもとに、今日の観劇楽しもうと思います。

3:ネタバレ含む感想

 

かなり話の本筋や演出に言及しているのでお気をつけください。

 

 

まず始めに、非常口の電気が消えて、劇場が完全にブラックアウトするんですけど、それがもう、映画館のそれとは全く違う、完全な黒なんです!!そして、音が観客を異世界に連れ出し、幕開け。そのほんの数秒で、あっという間に世界に引き込まれる。舞台って……すごいですね!!!

階段型の舞台での殺陣、迫力ありすぎて涙出そうだった……。PARCO劇場、大型スクリーンが背面に控えているので、舞台と映画のいいとこ取りという印象で。新しいアートの形を見ました。そんな贅沢な舞台で、階段型ステージがなんども形を変えて様々な地形を表すんです……。舞台って、限られたスペースしかないからこそ、色々な音で、空気で(心なしか場面による温度変化があったように感じました)、道具で、世界を表現するんだなぁって……。

 

上演中ですので深くは書けないですが、ずっと孤独にやってきた時に出会った、唯一境遇を分かち合える存在に救われて、そして裏切られる苦しみと絶望。裏切られることは、きっと薄々勘付いていて、それでも尚信じて。こんなにドラマチックで美しい絶望があるだろうか……。必死に目的のために闘って、闘って、ピサロは目的は達成出来たわけだけれど、その最期は彼の願うものとは遥か遠くにあって。ずっと神を信じきれなかった男が、最後に、初めて、すがりつくようにして信じた神。ピサロはアタワルパに様々なものを投影し、期待を寄せていた。Wikipediaの記事では到底たどり着けない、生の恐怖、狼狽、諦観、色んな感情が爆発するのを目の当たりに出来て、沢山考えさせられました。

現代社会においても、宗教のためという名目で数多くの戦争が起こっているんだよなぁ……、なんて考えながら観ていたら、本当に人類はインカ帝国がある頃から何も学ばないな……なんて悲しくなったりもして。

 

今回田中俊介さんをお目当てに劇場を訪れた訳ですが、ま〜とにかく田中さんの殺陣が印象的でした。階段型のステージ、本当にお稽古も体力消耗するし、踏み外す危険もあるし、足場が狭くてとにかく動きづらいはずなのに、田中さんがザンッと飛び跳ねて相手を殺戮する瞬間、その俊敏な動きにハッとさせられて。舞台全体が血塗られたような紅色で満たされているなか、真っ赤に染まって剣を振る姿は、余りに惨いのに、凄く綺麗で!田中さんに限らず、そのシーンは演出も殺陣も迫力満点で、興奮のあまり思わず顔が笑ってしまいました。

 

なんだか考えさせられる舞台だったのでブログもいつもより堅い文章になっちゃいましたが……笑

笑いどころもあり、しっかり考えさせ、涙も溢れそうになる、素敵な舞台でした。まだ追加公演もあるそうなので是非!