とまとの推しが尊い

ジャンルごった煮、推しにまつわることを書き連ねるブログ

8 とまと、映画「デッドエンドの思い出」を観る

デッドエンド の思い出の舞台挨拶に行ってきたので、文章に残しておこうと思います。

ストーリーに関するネタバレが無いように心がけますが、雰囲気など分かってしまうところもあるかと思うので、気になる方はブラウザバック推奨です。

 

(1)原作について

田中さんを知るきっかけはドグマンのMVで、いわば台詞のないお芝居でした。今回は映画のW主演ということで、沢山台詞もあるのかな……?高まる期待を胸に、文庫版の原作を購入。

よしもとばななさんの著書を拝読するのは以前に「キッチン」を読んだきりで。わくわくしながら読みました。

読み終わった後、とにかく心に残っていたのは情景描写の美しさ。

秋の空は透明な色をしていて、景色と溶け合うところまですうっと澄んでいて、どこまでもあいまいで、はっきりした感じが何もなくて、宙ぶらりんな私を優しくなぐさめた。

だったり、

いちょう並木が続く限り、いちょうの黄色い葉が地面にうずたかくもりあがり、一面が黄色だった。光を受けてそこらじゅうが光っているので、まるで黄色い雪が降ったあとのように、こんもりとした枯葉の山が、ふわふわっとした感じで道を覆い、果てしなく続いていた。

「すごい、きれい。」

私は言った。

「雪のようでしょ。」

西山君は言った。

だったり。こんな言語フィルタを通して世界が見えていたらどんなに豊かだろう……と思わずため息をついてしまいました。

 

仄暗いなかにぼんやりと明るさを見出していくストーリーですが、終始切ない。だからこそ暖かい。この小説、きっといつか悲しいことがあった時に読み返すだろうと思います。心が切ない時にポップミュージックよりもブルースが寄り添ってくれるように、そういう人にそっと涙を流させてくれる小説、かな。

気になった方は是非読んでいただきたい!短編集で、表題のもの以外もどれも少しセンチメンタルになる愛のお話なのですが、心地よい読後感なのでおすすめです!

 

どんな感じで実写化されるんだろう、田中さんはどう演技されるんだろう。わくわくしながら原作を何回も読みました。

 

(2)舞台挨拶について

た、田中さんかっこいいと可愛いのハイブリッド!!

役作りについて語る姿からは仕事へかける思いがひしひしと伝わり、会場を見渡して「わぁ〜〜!」って笑顔になっていらしたのが、見ていてこちらまで幸せになりました。

 

あとスヨンさん美しいし日本語も流暢で目が釘付けでした。日韓合同作品っていいですね。

 

印象に残っているのは、田中さんの隣に立っていらっしゃったよしもとさんが

「西山君は、優しくて、でもその奥底にヤバい部分を隠し持っているんじゃないか?というキャラクターで。田中君の演技は本当にそのまま西山君でした」

といったニュアンスのことを仰った際、

「めちゃくちゃ嬉しいです!本当は握手したいんですけど、緊張しすぎて目も合わせられない……」

と言って場を和ませて。よしもとさんがそれに応じて腕を引き寄せて、田中さんが照れながらありがとうございます!と言ってガッツポーズする、というちょっとしたやりとりが凄く暖かかった……。

 

(3)映画について

・セットやロケ地について

上がっていたインタビュー動画で、監督が「モネのキッチンが心に残っていて、その雰囲気を出したかった」とおっしゃっていらして。「モネ キッチン」で検索したらこれがまぁ美しい……。気になる方はこちらから。

エンドポイントは確かに飾らない美しさがあって、見ていて心地よかったです。名古屋に行ったら訪れたいカフェNo1間違いなしです!

 

個人的に心に残ったのは、夜の街並みのカットでした。私はもともと夜の、人通りのほぼない街を眺めるのが好きで。どこか寂しくて、だからこそ美しくて、心が安らぐ、そんな気分になるのですが。スクリーンに夜の街並みが次々と映し出された時、私は何故かふっと泣きそうになりました。美しい景色の切り取り方でした。

 

あとはお花の使われ方も素敵で。

桜、薔薇、かすみ草のようなドライフラワー、全てに意味があるように感じたのは私の深読みかもしれないですけど、どのお花もすごく心地よく画面に映えていて、観ていて心が落ち着きました。

 

・演技について

スヨンさんも田中さんも、演技していることを感じさせなくて。本当にナチュラルに溶け込んでいくお芝居でした。

原作よりも現実感のある役作りをされていた印象でしたが、それによってストーリーや台詞がより輪郭を持っているように感じました。

映画観た方は原作も読んでいただきたいなぁ……!どちらもそれぞれの良さがあって!!私の語彙力では語りきれないのが不甲斐ないのですが!!!

 

田中さんのお芝居をドグマンとダブルミンツでしか観たことのなかった私はかなり戸惑いました。

あの色気ダダ漏れのお兄さんでも、弱いからこそ強がって傷ついてしまう臆病なみつおでもなくて。こんなに視線や表情ひとつひとつに気遣いと優しさをにじませるんだ……俳優さん凄いな……ってなってました。

 

最初は田中さんかっこいい!みたいなミーハー丸出しの感情で見ていたのですが、段々それが西山くんに対する目線になって。西山くんがふとした時に見せる表情に色んなものが詰め込まれていました。また見直したい。

 

挨拶で「キャスト、スタッフの皆さんとの雰囲気づくりを大切にした現場で、培った暖かさを西山に乗せられたら」と仰っていたのですが、その点ではもう百点満点どころの沙汰ではなかったです。画面から溢れ出す仲の良さやら暖かさやら、勝手に客席で受け取ってほっこりしてました。

 

・個人的な感想 

風と光が美しくて、人が暖かくて、たまに落とす影が切なくて、観終わった時には心になにかぼんやりと暖かいものが残る、そんな映画でした。

エンドロールが終わっても、しばらくは椅子から立ち上がれずにいました。なんだか、すぐ歩き出してしまったら、せっかく拾ったものを落としてしまうような気がして。

繊細で、穏やかで、素敵な映画でした。

 

田中さんのおかげでこの映画に出逢えて、良かったなぁ……と。噛み締めています。

 

興味を持ってくださった方、映画『デッドエンドの思い出』2月に上映されるので映画館に足を運んでみてください!